世界文学に未踏の領域を拓きつづける詩人・吉増剛造

日本を代表する詩人として国際的な尊敬を集め、今なお現代文学の最前線を走りつづける吉増剛造は、先鋭的な言語がその限界地点で言語以外のものと接する場所に絶えず身を置いてきた。60年代から始められた自作の朗読は、音楽や現代美術との多彩なコラボレーションを展開しながら未曾有の言語/身体パフォーマンスへと昇華し、世界各地で熱狂的な反応を呼び起している。また、80年代以降は写真家としての活動を本格化させ、国内外で個展や写真集の出版も多い。

50年余の詩的実践の涯に出現した〈未開の庭〉のキセキ

映画への深い造詣、そしてジョナス・メカスやアレクサンドル・ソクーロフら世界的な映画作家との交友でも知られる吉増剛造が、ついに自らデジタルビデオカメラを携えて特異な「ロード・ムーヴィー」の制作を開始したのは2006年。程なくして「gozoCiné」と名付けられた作品群は、すべて詩人自らの手で撮影・録音・編集され、50年余に及ぶ詩人の軌跡を新たな角度から照らしだすとともに、「映画」に未踏の領域を開く試みとして、言語とイメージの現在へ苛烈な問いを投げかけている。

言語とイメージの根源へと下降する新たな旅が始まる

武蔵野の古井戸からブラジルの蟻塚へ、エッフェル塔から大阪・通天閣へ、横田基地から熊野の浮島、アリゾナの砂漠へ……。所縁の土地を再訪しながら詩の根源へと螺旋状に下りていく旅は、同時に泉鏡花、萩原朔太郎、折口信夫、中上健次、島尾ミホ、ベケット、イェイツ、ツェラン、デュラス、デリダ、ドゥルーズらの言葉を多様に響鳴させる。そしてまた、「奥の細道」を辿る旅がカルナックの環状列石へ、柳田國男の「海上の道」がフランク・ロイド・ライトの「夢の建築」へと通じ、さまざまな領域を横断した光と物質の共振を開示する。

文学と芸術の現在を問う、至高のロード・ムーヴィー集!

2009年2月には、シリーズ19作品を収録したDVD+Book『キセキgozoCiné』(オシリス)が、まったく新しい「書物」への挑戦として刊行され、各方面で大きな驚きをもって迎えられた。さらに山形国際ドキュメンタリー映画祭(2009年10月)、恵比寿映像祭(2010年2月)などで、それぞれ数作が上映されたのに伴い、その反響は静かに広がっている。

来たるべき映画の幕を開け、東京に続いて、関西で初の劇場公開!

2011年夏、5年間にわたって制作されたgozoCineの全作品(52篇)が、ポレポレ東中野(東京)を舞台に新たな「映画体験」として3週にわたって劇場公開されたのに続いて、2011年11月、大阪、十三の第七藝術劇場での上映が決定。東京未公開作品2篇を加えた32作品が、5つのプログラムで公開される。期間中には、多彩なゲストを招いたトーク・イヴェントも開催。

吉増剛造(よします・ごうぞう)

1939年東京生まれ。慶應義塾大学国文科卒業。

在学中から詩作を始め、第一詩集『出発』(64年)以来、先鋭的な現代詩人として国内外で活躍。詩集『黄金詩篇』(高見順賞)、『オシリス、石ノ神』(現代詩花椿賞)、『螺旋歌』(詩歌文学館賞)、『「 雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(芸術選奨文部大臣賞)他多数。写真集『表紙』(毎日芸術賞)など。gozoCine19篇と25人の著者によるテキストを収録したDVD+Book『キセキ gozoCine』が2009年に刊行されている。

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